
日本茶と器 ― 急須・湯呑が味に与える影響
2025-09-17・日本茶急須湯呑茶器味わい
はじめに
「同じ茶葉なのに、器が違うと味まで違う気がする」
そんな経験はありませんか?
実はその感覚は正しく、
日本茶は 急須や湯呑の素材や形状 によって、味や香りの印象が変わります。
今回は、急須と湯呑がどのようにお茶の体験を左右するのかを解説します。
※ここに画像を挿入(2025-09-17-japanese-tea-utensils.jpg)
1. 急須が与える影響
① 素材の違い
-
常滑焼(朱泥)
→ 多孔質で余分な渋みを吸収し、まろやかに。煎茶に最適。 -
萬古焼(紫泥)
→ 熱保持性が高く、玉露や上級茶に向いている。 -
磁器製
→ 成分に影響を与えず、茶葉本来の味をそのまま楽しめる。研究や比較試験にも使われる。 -
ガラス製
→ 見た目に美しく、色の違いを観察できる。夏の冷茶や新茶におすすめ。
② 形状の違い
- 横手型
→ 日本で一般的。注ぎやすく、日常使いに便利。 - 後手型(中国風)
→ 海外でも人気。手首の動きに慣れが必要。 - 上手型(急須の上に持ち手)
→ 湯量が多いときに便利。旅館や茶席でよく使用。
2. 湯呑が与える影響
① 厚み
- 厚い湯呑
→ 保温性が高く、熱いお茶をゆっくり楽しめる。 - 薄い湯呑
→ 口当たりが軽く、繊細な味を感じやすい。
② 大きさ
- 小ぶりの湯呑
→ 玉露や上級煎茶に。少量をじっくり味わう。 - 大きめの湯呑
→ 番茶やほうじ茶向き。ゴクゴク飲める。
③ 素材
- 陶器
→ 素朴な風合いで保温性がある。 - 磁器
→ 滑らかな口当たり。香りや色が際立つ。 - ガラス
→ 冷茶に映える。視覚的にも涼やか。
3. 器と温度・香りの関係
- 急須の素材によって 熱の伝わり方 が異なるため、同じ時間・温度でも抽出結果が変化。
- 湯呑の厚みや口径によって 香りの広がり方 も変わる。
- 小ぶりの器は香りを凝縮、大きめの器は広がりやすい。
👉 この違いが「同じ茶葉なのに味が違う」と感じる理由です。
4. シーンに合わせた器の選び方
- リラックス時間
→ 朱泥急須 × 小ぶりの湯呑で旨味を堪能。 - 来客やおもてなし
→ 白磁急須 × 磁器湯呑で美しい色と香りを演出。 - 夏の冷茶
→ ガラス急須 × ガラス湯呑で涼しげに。 - 日常の一杯
→ 横手急須 × 中サイズの陶器湯呑でバランスよく。
5. 試験対策ポイント
- 「急須の素材と味の関係」
- 「湯呑の厚み・形状による香りや温度の違い」
- 「シーンに応じた茶器の選択」
これらは日本茶インストラクター試験でも出題されやすい分野です。
まとめ
- 器は単なる道具ではなく、味や香りを左右する重要な要素。
- 急須は素材や形状で抽出の仕上がりが変わる。
- 湯呑は厚みや大きさで温度・口当たり・香りに影響。
- シーンや茶種に合わせて器を選ぶことで、日本茶はさらに美味しくなる。
「どの器で飲むか」までこだわると、お茶時間はぐっと豊かになります。
参考文献
- 日本茶業中央会『日本茶の事典』
- 農林水産省「日本茶を美味しく飲むための基本」
- 急須研究会『急須と日本茶文化』