
日本茶と抽出時間 ― 味わいの変化とコントロール
はじめに
「お茶を淹れるとき、時間を測ったことはありますか?」
多くの人は感覚で淹れているかもしれませんが、
実は 抽出時間は味を決定づける大切な要素 です。
短すぎても、長すぎても、日本茶本来の魅力は引き出せません。
今回は、抽出時間が成分や味にどのような影響を与えるのか、
そして状況に応じた最適なコントロール方法を解説します。
※ここに画像を挿入(2025-09-16-japanese-tea-brewing-time.jpg)
1. 抽出時間と成分の関係
お茶の中には、時間の経過とともに異なる成分が溶け出していきます。
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最初の30秒
→ テアニン(旨味)や甘味成分が多く出る。 -
60〜90秒
→ カテキン(渋味)やカフェイン(苦味)が増えてくる。 -
2分以上
→ 渋味・苦味が優勢になり、旨味のバランスが崩れやすい。
👉 つまり「短時間はまろやか」「長時間は渋い」という違いが明確に現れるのです。
2. 茶種別・おすすめ抽出時間
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玉露
→ 120秒前後(低温でじっくり旨味を引き出す) -
煎茶(上級)
→ 60〜90秒(甘味と渋味のバランスを意識) -
煎茶(普及品)
→ 45〜60秒(すっきりとした味わいを楽しむ) -
ほうじ茶・番茶
→ 30秒前後(香ばしさを活かすため短時間でOK) -
抹茶
→ 時間ではなく「点て方」が重要(すぐに立てて飲む)。
3. シーンに応じた時間調整
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仕事や勉強中に集中したいとき
→ 少し長めに抽出して、カフェイン・カテキンを強調。 -
リラックスしたい夜
→ 短めにして、旨味と優しい甘味を味わう。 -
おもてなしや食事と合わせるとき
→ 標準的な時間で、誰にでも好まれるバランスに。
4. 抽出時間を安定させる工夫
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タイマーを使う
→ スマホやキッチンタイマーで測れば、再現性が高い。 -
茶器の温度を意識する
→ 急須や湯呑が冷えていると時間感覚が狂いやすい。 -
試飲を重ねる
→ 同じ茶葉を条件を変えて淹れると、違いが体感できる。
5. 試験対策のポイント
日本茶インストラクター試験では、
- 「抽出時間が味や成分に与える影響」
- 「茶種ごとの最適時間」
が必須知識です。
特に「玉露は低温で長め」「煎茶は中温で1分前後」「ほうじ茶は熱湯で短時間」という区別は覚えておきたいところです。
まとめ
- 抽出時間は味のバランスを左右する重要な要素。
- 短時間は旨味と甘味、長時間は渋味と苦味が優勢になる。
- 茶種ごとに「最適時間」があり、シーンに応じて調整できる。
- タイマーを活用すれば、安定して美味しい一杯を再現可能。
「ほんの30秒の違い」が、日本茶の世界を大きく変えてくれます。
参考文献
- 日本茶業中央会『日本茶の事典』
- 農林水産省「おいしい日本茶のいれ方」
- 静岡県茶業研究センター 報告