日本茶と水質 ― 硬度・ミネラルが与える影響
はじめに
「同じ茶葉なのに、場所によって味が違う」
そんな不思議を感じたことはありませんか?
実はその原因のひとつが 水質 です。
日本茶の風味は、お湯に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル、つまり 水の硬度 によって大きく変化します。
今回は、水質が日本茶に与える影響と、家庭での工夫について詳しく見ていきましょう。
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1. 硬度とは何か?
水の硬度は主に カルシウム と マグネシウム の含有量で決まります。
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軟水(硬度100mg/L未満)
→ 日本や東アジアで多い。口当たりがやわらかい。 -
中硬水(100〜300mg/L)
→ ヨーロッパの一部で見られる。ミネラル感が強め。 -
硬水(300mg/L以上)
→ ヨーロッパや中東に多い。苦味が強く、重たい口当たり。
👉 日本は世界でも珍しい「軟水文化」。
お茶を美味しく淹れやすい環境にあります。
2. 水質が日本茶に与える影響
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軟水
→ テアニン(旨味成分)がよく抽出され、まろやかで繊細な味わい。
→ 日本茶の香りや色も美しく出やすい。 -
硬水
→ カテキンやカフェインの抽出が強まり、渋味・苦味が前面に出やすい。
→ 色は濁りがちで、香りが重たくなる傾向。
つまり、同じ煎茶でも 軟水で淹れると甘味が際立ち、硬水で淹れると渋味が強くなる のです。
3. 日本茶と地域ごとの水
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日本(軟水)
→ 茶道や日常の急須文化が発達した理由のひとつ。 -
ヨーロッパ(硬水)
→ 緑茶より紅茶やハーブティーが主流。硬水は紅茶の色と香りを引き出しやすい。 -
中国
→ 地域によって水質が大きく異なり、烏龍茶や黒茶などの発展につながった。
👉 水質と茶文化には、深い関係があるのです。
4. 家庭でできる水質調整の工夫
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ミネラルウォーターを選ぶ
→ 軟水(硬度50mg/L前後)を選ぶと日本茶に適している。 -
浄水器を使う
→ 水道水のカルキ臭を除去して、茶葉本来の香りを楽しめる。 -
ブレンドウォーター
→ 硬水と軟水を混ぜて、自分好みの味わいを探るのも一興。
5. 試験対策の観点から
日本茶インストラクター試験では、
- 「水の硬度が成分抽出に与える影響」
- 「軟水が日本茶に適している理由」
が問われやすいポイントです。
特に「軟水=テアニンが出やすい」「硬水=カテキンが強く出る」という整理は必須です。
まとめ
- 水質は日本茶の味を左右する大きな要素。
- 軟水は旨味や香りを引き立て、硬水は渋味や苦味を強める。
- 日本の軟水環境は、日本茶文化が育まれた背景のひとつ。
- 家庭でも水を工夫することで、一杯のお茶は格段に美味しくなる。
「お茶は茶葉だけでなく、水も選ぶ」
その意識が、美味しい日本茶の第一歩です。
参考文献
- 日本茶業中央会『日本茶の事典』
- 農林水産省「日本茶を美味しく飲むための基本」
- WHO「Guidelines for Drinking-water Quality」