日本茶と抽出温度 ― 成分と味のバランス
2025-09-12・日本茶抽出温度成分味わい淹れ方
はじめに
「同じ茶葉なのに、淹れるたびに味が違う」
そんな経験をしたことはありませんか?
その理由のひとつが お湯の温度 です。
日本茶は、温度によって抽出される成分が大きく変わり、
結果として味わいや香りに違いが生まれます。
今回は、抽出温度と成分の関係を整理しながら、
美味しく淹れるためのコツを紹介します。
1. 抽出温度と成分の関係
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テアニン(旨味)
→ 低温でよく抽出される。甘味やまろやかさが引き立つ。 -
カテキン(渋味・苦味)
→ 高温で多く溶け出す。渋みが強まり、すっきりした後味に。 -
カフェイン(苦味・覚醒作用)
→ 熱いお湯で抽出されやすい。
つまり、温度を変えることで
「旨味を重視するか、渋みを活かすか」をコントロールできるのです。
2. お茶の種類と最適温度
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玉露・高級煎茶
→ 50〜60℃
→ 旨味(テアニン)を最大限に引き出す。 -
一般的な煎茶
→ 70〜80℃
→ 渋みと旨味のバランスがよい。 -
番茶・ほうじ茶
→ 90〜100℃
→ 香ばしさを際立たせ、さっぱりとした味わいに。 -
抹茶
→ 70〜80℃が目安。熱湯だと泡立ちや風味が損なわれやすい。
3. シーン別のおすすめ
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リラックスしたいとき
→ 低温で玉露を。甘味とまろやかさが心を和ませる。 -
集中したいとき
→ 高温で煎茶を。カフェインとカテキンでシャキッと。 -
食後に口をさっぱりさせたいとき
→ 熱湯でほうじ茶や番茶を。油っぽさを流してくれる。
4. 家庭でできる温度調整の工夫
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湯冷ましを使う
→ 急須に入れる前に湯冷まし器や茶碗に移すと温度が下がる。 -
ポットの温度表示を活用
→ 最近の電気ポットは温度調整機能が便利。 -
氷を使った冷煎茶
→ じっくり低温で抽出すると、甘味が強調される。
まとめ
- 日本茶は温度によって成分の抽出バランスが変わる。
- 低温は旨味(テアニン)、高温は渋味(カテキン)が優位。
- 茶種やシーンに合わせて温度を調整することで、
一杯のお茶をもっと楽しめる。
温度を意識して淹れるだけで、
日本茶はぐっと美味しくなります。
参考文献
- 日本茶業中央会『日本茶の事典』
- 農林水産省「日本茶の淹れ方」
- 茶業研究報告(静岡県農林技術研究所ほか)