日本茶の摘採と製造工程の基礎知識
2025-08-17・日本茶茶文化製茶工程煎茶
導入
私たちが日常的に飲んでいる日本茶は、畑で摘まれた茶葉がそのまま急須に入るわけではありません。
新芽の摘採時期やその後の製造工程が、香り・旨味・色合いといった品質を決定づけます。
今回は、日本茶の基本を理解するうえで欠かせない「茶葉の摘採」と「製造工程」について整理していきます。
茶葉の摘採とその重要性
茶葉は 摘採のタイミング が非常に重要です。
- 一番茶(新茶):4月下旬〜5月に摘まれる新芽で、アミノ酸(旨味成分)が豊富。
- 二番茶:6月頃に摘まれる。カテキンが多く、渋みが強くなる。
- 三番茶・四番茶:収量は増えるが、品質は低下しやすい。
特に、一番茶は日本茶の中でも最も高品質とされ、「初摘み」「新茶」として珍重されます。
茶園では、芽の伸び具合を見ながら「一芯二葉」または「一芯三葉」で丁寧に摘み取ります。
日本茶の主要製造工程
摘採された茶葉はすぐに加工されます。酸化や劣化を防ぎ、新鮮な香味を閉じ込めるためです。
代表的な煎茶の製造工程を見ていきましょう。
1. 蒸し
摘んだ直後の生葉は酵素による酸化が進みやすいため、高温の蒸気で15〜60秒ほど蒸すことで酸化を止めます。
蒸し時間の長さで「浅蒸し」「深蒸し」に分かれ、味わいや色合いが変化します。
2. 粗揉(そじゅう)
熱風をあてながら茶葉をもみほぐし、水分を均一にします。
茶葉の繊維をほぐすことで乾燥が進みやすくなり、形が整い始めます。
3. 中揉(ちゅうじゅう)・精揉(せいじゅう)
さらに乾燥させながら、葉の形を細長く整えていきます。
特に精揉では独特の針のような形状になり、日本茶らしい美しい外観が生まれます。
4. 乾燥
仕上げにしっかり乾燥させ、水分量を5%程度に抑えることで保存性を高めます。
ここまでを「荒茶」と呼び、この後に選別や火入れを行って出荷されます。
製造工程のバリエーション
煎茶以外の日本茶も、この基本工程から派生して生まれています。
- 玉露・かぶせ茶:摘採前に覆いをして日光を遮ることで、旨味が強調される。
- ほうじ茶:荒茶や煎茶を強火で焙煎し、香ばしさを引き出す。
- 抹茶:覆い下で育てた碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いた粉末茶。
製造工程の工夫によって、日本茶は驚くほど多彩な表情を見せてくれるのです。
まとめ
茶葉の品質は 摘採時期 と 製造工程 によって大きく左右されます。
- 一番茶はアミノ酸が多く旨味が強い
- 蒸しで酸化を止め、揉みや乾燥で形と保存性を整える
- 玉露・抹茶・ほうじ茶などは、この基本工程から派生した製法
こうした知識を知ることで、日々のお茶がより奥深く楽しめるようになります。
参考出典
- 農林水産省「日本茶の基礎知識」
- 日本茶業中央会『日本茶の事典』
- 静岡県茶業会議所「製茶工程の流れ」