日本茶の収穫方法と特徴 – 手摘みと機械摘みの違い
2025-08-15・日本茶茶文化煎茶抹茶茶葉収穫
導入
日本茶の品質は、茶葉の品種や栽培方法だけでなく、収穫方法によっても大きく左右されます。
特に「手摘み」と「機械摘み」には明確な違いがあり、それが最終的な香りや味わいに影響します。
この記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを、歴史的背景や現代の茶産業の状況も踏まえて解説します。
1. 手摘みの特徴と魅力
手摘みは、熟練した茶摘み職人が一芯二葉(新芽とその下の二枚の葉)を丁寧に摘み取る方法です。
- メリット
- 芯芽を中心に選別できるため、茶葉の品質が極めて高い
- 芽が傷みにくく、香りや旨味成分が保持されやすい
- 高級茶(玉露、抹茶用碾茶など)に最適
- デメリット
- 労力と時間がかかるためコストが高い
- 熟練者不足により継続が難しくなっている地域も多い
歴史的に、日本茶の伝統的な収穫はほぼ手摘みでした。現在も京都府宇治市や静岡県の高級茶産地では、品質重視のため手摘みが続けられています。
2. 機械摘みの特徴と進化
機械摘みは、乗用型や肩掛け型の摘採機を使って茶園を効率的に収穫する方法です。
- メリット
- 短時間で広い面積を収穫できるため生産効率が高い
- 人手不足の解消につながる
- 大量生産に向く
- デメリット
- 新芽だけでなく硬い葉や茎も混ざる可能性がある
- 茶葉が傷つきやすく、風味がやや劣る場合がある
近年は機械の精度が向上し、「選別精度の高い摘採機」や「ドローン活用による生育管理」など、品質を維持しながら効率化を図る技術も登場しています。
3. 収穫時期と品質の関係
日本茶は通常、**一番茶(4〜5月)・二番茶(6〜7月)・三番茶(7〜8月)**と年に数回収穫されます。
中でも一番茶は、冬の間に蓄えられた栄養分が詰まっており、最も香り高く旨味が豊富です。
- 一番茶:手摘みが多く、高級茶向け
- 二番茶:機械摘みが主流で、日常用の煎茶や加工茶に
- 三番茶:需要が限られるため一部の地域では収穫しない場合も
4. EGCG(エピガロカテキンガレート)と収穫の関係
茶葉に含まれるポリフェノールの一種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」は、日本茶特有の強い抗酸化作用を持つ成分です。
EGCGは収穫時期や葉の成熟度によって含有量が変化します。
- 若い芽ほどEGCG含有量が高く、渋味とともに爽やかな香りをもたらす
- 成熟した葉はEGCGがやや減少し、代わりに苦味成分が強まる
- 高級茶に若芽が使われるのは、このEGCGバランスを活かすため
収穫方法によってもEGCG含有量は変化し、手摘みで若芽を中心に収穫した場合は特に高い含有率を保ちやすいとされています。
まとめ
- 手摘みは品質重視、高級茶向け
- 機械摘みは効率重視、大量生産向け
- 一番茶は最も香り高く旨味豊富
- EGCG含有量は若芽に多く、収穫方法が品質に直結
現代の日本茶づくりでは、伝統と効率化のバランスを取りながら、それぞれの茶園に合った収穫方法が選ばれています。
出典
- 農林水産省「茶の生産と消費」
- 静岡県茶業会議所「茶の品質と収穫方法」
- 日本茶業中央会「日本茶の科学」